「お昼はどうなさいますか?」
「こちらで済ましますのでお気遣いなく」
“社交辞令”でオレが尋ねると少し派手な感じのネクタイを締めた上席調査官はあっさりと答えた。
予定どおり10時から税務調査がはじまり予想の1時間を超え昼前まで面談が行われた。
業務の内容を細かく説明させられたあとすぐに経理資料の作成について説明を求められた。
経理担当の土井くんが説明、無難に進んでいった。
この土井くんは37歳。ウチの経理を請け負ってくれて3年目、早稲田の政経学部卒業で外国企業とのトラブルなどの際に英文書類を作成出来るという才能の持ち主。
正直、ウチの仕事を受けてくれているのが自分でも不思議な時がある^^
そんな彼は数年前にロサンゼルスでピストル強盗に襲われて現地の新聞とTVに出たこともある。
「かなり細かい調査官ですね」
香枦園駅前の「万両」で昼ごはんを食べている時に会計事務所の女所長が言った。
鯖の煮付けが一瞬のどにつかえかけた。
「社長は外へ営業に出ていただいて結構ですから、私から調査官には説明しておきます」所長がそう言ってくれたがその後も昨年の売上げ内容について、提出した資料からの不明点を3時間に渡って数箇所自ら説明。結局、昼ごはん以外に一歩も外出できなかった。
4時ちょうど、調査が終了。
担当の税理士は「今日の感じなら問題ないでしょう、聞かれたことはすべてしっかり答えが出せましたので」ちょっと安心したが・・・・疲・れ・た・・・
年貢の納め忘れがないか・・・明日も10時からお代官さまの子分は自転車に乗ってやってくる。
商人は辛い^^